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春休みジャズフレージング特別講座「ジャズギター初心者に向けて」番外編 [音楽雑感]

 


今回の春休み特別講座に対して、興味深い質問もいくつか頂きました。それに対する僕の考えもまとめておきます。現在(いま)の世の中、ジャズ講座もこうやってオープンソース的にやるのがいいんだと感じてます(笑)。


●「ジャズギター初心者に向けて」Part 3

番外編 (2/22 記)


ジャズギター初心者に対する投稿 Part 3 に対する塩田さんから興味深い質問がありました。それに関してお答えしましょう。多分急に話が難しくなったかもですがしょうがない(苦笑)。塩田さんの質問は以下です。

 

Q:小生が取り組んでいるのは、なるたけ多くのllm7-V7-lのフレーズを覚えることです。覚えたら、色々な曲やキーに対応させたいと思ってます。覚える際、スタートの音がllmのコードの何の音に当たるかは把握しているのですが、フレーズ全ての音をきちっと把握していません。(中略)自分はこうやってフレーズを多く覚えてソロを組み立てるのが自分の限界かなと思っています。

 

そういう現状を踏まえて、布川プロのレッスン内容を考えると、覚えているフレーズを塊でなく、1音1音相対音感で捉えられるようにした方がよいということでしょうか?具体的には、各フレーズをゆっくり弾いて個々の音を把握できるようにする?これをちゃんと把握し、色々なキーでフレーズを弾ければ、結果としてポジションも把握できるということになるのかと。布川プロのレッスンの本旨とは外れていると思うのですが、ご助言頂けると助かります。

 

直接的な回答ではありませんでしたが(苦笑)。以下のようにお答えしました。

 


 

まず、ジャズ初心者がジャズを演奏するのに、塩田さんのやり方は、確かに「それもあり」とは言えましょう。僕も教え始めた頃はそういうやり方を推奨していました。ただ思うことは、そのやり方でジャズ初心者にそれなりにジャズをジャズらしく演奏することはできるようになりますが、本来のジャズプレイヤーに必要なインプロヴィゼーション能力を上げることには必ずしも繋がらないということです(繋がる場合もあります。人によります。)。

 

つまり、コード進行の美味しい箇所でドミナントモーションのフレージング(あるいはサブドミナントやトニックでもよい。サブドミナントllmからドミナントモーションに繋げればいわゆるll-V-Iフレーズになるわけです)を使ってみよう、というやり方は英会話で場面場面で使うフレーズを覚えるやり方に似てます。それがその場面と違う曲や展開になったときに、本来のジャズ的即興能力がなければ、何も喋れないということになりがち。例えば色々なll-V-Iフレーズを覚えている人がファンクの一発ものとかでフレージングが思いつかないとかいう例をいままで生徒で何人も見て来ました。

 

それで、僕は、いまの塩田さんのやり方を否定するわけではありません。ll-V-Iフレーズを弾けばいきなりジャズっぽい感じにはなるし(リズムやアーティキュレーションのことはおいといて)、それを上手く繋げれば1,2コーラスくらいのソロを作ることはできるでしょう。何処かでライブ演奏でもするとして、それで充分達成感はあるかもしれません。そういう風にして楽しんでいる人は生徒でもいます。

 

ただ、そのやり方は、そうですねえ、クラシックの曲を覚えるとかコピーバンドで弾くような類いと似ています。

 

そんな難しいフレーズをいくつも並べて弾かなくても、いい感じにアドリブでソロをすることはできます。インプロヴィゼーション能力があれば、ラドレミくらいの音数でかなりいい感じにジャズっぽく弾けます。もっと極端に言えば2音、あるいは1音でもソロはできるってことです(8小節は持ちますね)。

 

もし、仮に象さんのメロディーを頭に思い浮かべながら弾くことができなくて、ll-V-Iフレーズを弾けるのであれば、それはジャズっぽいメロディーは知っているけど、インプロヴィゼーション能力はないと言えます。

 

だから、これは取捨選択。ジャズっぽいソロを2コーラスくらいライブで取りたいっていうのならば、予めソロをそういうフレーズ集でも上手く使って作ればいいんです(僕は大学ジャズ研時代のコンサートとかそういうことをやりました。1年のときでしたが。コピーバンドに近いです)。上手く弾ければそれは「それらしく」なります。

 

でも、根本的にインプロヴィゼーション能力を高めたいのなら、やっぱり象さんが弾けないとまずいと僕は思います。それで、簡単な音列(なるべく少ない音数で始める)だけでそれなりにプレイができるということが大切だと考えています。でも上手くないうちは、ドとレだけ弾いてたらそれはつまらないでしょうね(笑)。

 

だから、こういうのが両方のバランス。ll-V-Iフレーズを覚えたら、とにかくそれをメロディーとして覚える。あるいは2小節くらいの長いものだったら短い単位にして覚える。そういうものを辺り構わず使ってみる。一発もので使ったっていいんです。コード進行を譜面とかで見ちゃいけない(そうすると目からの情報でフレーズをはめに行くようになるから)。例えば、ミソラッドーって上がるフレーズ(3拍めから出て次の小節のアタマにドーって行くのが一番自然)。単純な音使いだけど、たぶん何処で弾いてもジャズっぽいです。あるいはもうちょっと難しくなってソファレレ#ミっていうダブルクロマチックのフレーズ。弾いたとたんに、「おぬし、ジャズフレーズ知ってるな」みたいになるフレーズです。これ、試しにメジャーキー、あるいはブルースなどで1コーラステキトーに弾き続けてみてください。間違いなくどこでもサウンドします。

 

答になってますでしょうか?




●「ジャズギター初心者に向けて」Part 3

番外編2 (2/23 記)


いわきの素晴らしいサックス奏者の下田まりこさんから前回のPart 3番外編にコメントと質問があったので、Part3 番外編2としてまた投稿します。

 

彼女は、色々な人のアドリブ練習法を聞いて、大きくは「フレーズ覚える派」と「その場でメロディー発想する派」に分かれていると感じたそうです。で、僕は「フレーズ覚える派」と「その場でメロディー発想する派」と分けて考えていません。ですから、確かに「両方のアプローチが合わさっている」んでしょうね。

 

どういうことかと言うと、フレーズっていうのは、僕はメロディーだと思ってるのです。いわゆるジャズフレーズ(バップフレーズかな)はかなり複雑で歌いにくいものも多いですが、歴史的に認められたメロディーってところかな。

 

もっとコンテンポラリージャズ的な複雑なメカニカルなフレーズでも核となる音があってやはりそれはメロディーと捉えています(あまりに速いフレーズはサウンドの塊やハーモニーとなってしまいますが)。

 

当然ながら、ジャズ研時代の練習段階では、色々フレーズをコピーしましたよ。

 

例えばミーレラファミレーってフレーズがあるとします(レラファは3連)。ジャズやってる人なら皆知ってるllm(9)っぽいアルペジオフレーズ(多分まりこさんも知ってる)。これをDm7の場所で弾けばそりゃーアルペジオだから合います。でもCキーの曲で適当なところでこのフレーズ弾いても結構合います。トニックっぽいミソシレシドミソなんかだったら、ほとんどどこでも合います。だからコピーしたフレーズはコード進行見てはめて行くのではなく、転調しないのであれば、片っ端からスタンダード曲とかで弾いて行けばいいんです(ドミナントモーションのフレーズだけは、コード弾いてるようなもんだからちょっと違いますが)。そういう意味では「フレーズは覚えたけど、コード進行見て嵌めてはいない」という感じでしょうか。

 

何てことを言ってますが(笑)、正直言えば初期段階(大学1年生の頃)ではかなりフレーズ嵌める練習もしました。ブルースとかで何コーラスも弾いて必ずドミナントモーションのところで同じフレーズを弾くとかそういう練習。フレーズを身体に入れる練習ですね。そうしてフレーズが身に付けば、後は勘でどこで弾けばサウンドするかがわかるようになって来る。

 

話をミーレラファミレーに戻すと、これもフレーズを嵌めるのではなく、全体のサウンドの感じを覚えれば、いくらでもヴァリエーションを作れます。まず、リズムを変える。全部8分音符でミレラファミレー、音を変えてミドラファミレー、ミド#ラファミレーにしたらllmmaj7っぽくなって(メロディックマイナーっぽいとも言える)かっこいい。拍をずらすこともできる。2拍めから出て「うんミレラファミレー」、3拍めから出て、「うんうんミレラファミレー」、4拍めから出て「うんうんうんミレラファミレー」全部OKです。ただ8分音符ずらしたら何か変なメロディーになります。8分音符を四分音符にしてもいいし、「うミッレ」とかシンコペーションにしてもいい。そういうことを実際にやってみるわけです。結構違ったフレーズみたいになるかもしれない。

 

質問に戻ると、「フレーズ覚える練習」と「その場でメロディー発想する練習」は常に並行してやっていたと思います。ちなみに、僕は変な奴で(笑)、ギター始めて数ヶ月からアドリブ練習をしてました。だから常に後者のことはやって来たと言えます。あと、いまは「フレーズ覚える練習」はほとんどしません。ただフレーズを作ることはたまにやってます。

P.S…何かだんだん本格連載になって来ちゃったぞ。どこまで続けられるだろう…。



●「ジャズギター初心者に向けて」番外コラム (2/26 記)

 

昨日の羽生さんのエキジビションの音楽、「星降る夜」の元曲思い出すのに1時間くらいかかった。これが爺ってことですな(苦笑)。

最初、頭に浮かんだのはチャイコフスキー「白鳥の湖」。やった!と3秒くらい思って、うん??何か違うぞ(苦笑)。

 

もちろんサンサーンスの「白鳥」。あまりに綺麗なメロディーなので、最近ソルフェージュの話とかも書いてるし、酒飲みながらテレビと一緒にメロディーを弾いてみた。なるほど、こうなってるのか…。Dbメジャーキーからマイナーっぽくなって(b3E音に行く)それがFメロディックマイナーの導音。スケールで上がって行って高音Abの盛り上がり!

 

その後パッと落としてそのままFベースでDbキーに戻る。同じメロディーが全音で下がる。とにかく美しい。そしてEbドリアン。この辺りの件りがポールマッカートニーみたいって思った。スケールの上がり下りとちょっとした転調でこんなに美しくなるんだなあ。トニックディミニッシュっぽいサウンドもすごくいい。

 

若い頃は、こんな風にテレビでかかる音楽を直ぐ弾く練習をよくしたものです。

 

 


 

 

P.S…以下URLに布川俊樹の最新ジャズギター教則本の情報があります。興味ある方は是非!

 

http://nunosan.blog.so-net.ne.jp/2016-08-25



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