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コロナ禁酒法時代にライブミュージシャンが生き抜くことについて [日々着眼時々思案]



「コロナ禁酒法時代にライブミュージシャンが生き抜くことについて」

 

こういうことを書くべきかどうか迷ったんだけど、思い切って書いてみます。

 

僕はコロナ時代(* )の前年の2019年春に自分のYouTube Channelで積極的な映像アップを始めました。ヒマだったことと、ジャズミュージシャンとして、いままでの仕事のやり方が立ち行かなくなっていたことをヒシヒシと感じていたことが始めた動機です。また、お調子者の僕は、あわよくば月に数万でも稼げるようなバイトYouTuberにでもなれれば(僕のバイトYouTuberの定義は日収1,000円です。プロYouTuberは日収1万円)いいな、とも軽く考えてましたけどね(笑)。

 

いまは、YouTuberは全く考えていません。2020年になってコロナ時代になって音楽仕事は激減、ライブミュージシャンも皆こぞってYouTube Channelを始めました。これだけ増えたらよっぽどの映像を作り続けないとバイトYouTuberは不可能です。いまジャズでも他の音楽でも、YouTuberで人気がある人は、ライブミュージシャンとしての人気とは違います。その世界にはその世界の売れてる人、あるいはイヤな言葉ですがヒエラルキー的なものも感じます。僕はその世界では全然ペーペーですね (僕より数年前に始めた人たちがYouTuberとして先行者利益があったと思います。まあ、YouTube映像を仕事と思ってそれに賭けて作ってる人の映像レベルには全くかなわないというのもあるけど)。

 

とは言っても、YouTube Channelをコロナ前に充実させたことは結果的にはラッキーでした。コロナ時代になってから始めた人よりは、僕にもある程度の先行者利益はあったってことですね。教則映像などを、コロナ前の2019年に相当公開していたので、自然にオンラインサロンに移行することができました。今年になってからは、一般公開している映像は、ほとんどがライブ映像で、教則映像は数本程度しか公開していません。実は定期的に結構作ってはいますが、サロン限定公開にしています。

 

教則映像を作るのは、モチベーションを上げるのがそれなりに大変です。手間暇かけて作ってるYouTuberの映像見ると、感心しますが、好きじゃなきゃできないな、って思います。映像は撮って弾いて喋ったりするだけならば空いてる時間にできないことはないのですが、編集まで考えるとそれなりに作るのは大変です。僕はいま日収100円くらいの趣味のYouTuberなんですが (苦笑)、僕にしてはすごく視聴回数が多かった教則映像 「ギタリストは2-5-1を楽勝で覚えられる」 (10日で8000再生くらい)をアップしたときに1日900円くらい行ったのが最高です。そういうのをコンスタントに月2回くらい出し続けてようやくバイトYouTuberってところでしょう。僕には、とてもそういうことをしたいっていうモチベーションはありません。ちなみに、僕のあげた映像で1万再生以上のものは8本だけ。最も収益があったのは「インチキバッハ&インチキジムホール」の7,000円くらいかな(3.4万再生)。ああいう映像を作るためには丸一日はかかります。それだけ再生されてようやくバイト1日分ですね(苦笑)。

 

でもオンラインサロンのために映像あげるのは、モチベーションは上がります。相手の顔が見えるし、毎月会費を頂いているから、仕事としてやらなきゃという気持ちになるからです。

 

いまは YouTubeをぐるぐる回れば、ありとあらゆる教則映像(ライブ映像も)を見ることができます。教えてる生徒だって、そんなのから色々探し出して練習している生徒がほとんどです。ただ、作ってる側としては、完全に勤労奉仕、趣味の映像作り、仕事としての側面は営業活動くらいしかありません。

 

緊急事態宣言で禁酒法時代になってからは、お客さんの数は正直激減です(10人以下が当たり前。まあ僕の場合ではありますが)。ちなみに、すごく久々にやった先週小岩での福田重男氏とのライブはお客さん5人でした。最近某所ではお客さんゼロもありました。行く気にならない気持ちはよーくわかります。仮にコロナ感染リスクをそれほど気にしない人だったとしても、いま夜に外の店で外食する気になかなかならないんじゃないかな(僕のような酒飲みの場合ですが)。

 

車で行ったりしたら赤字になるライブも増えました。納ちゃんとかよく言ってますが「これは果たしてプロミュージシャンと言えるのか?」って話ですよね。でももうだいぶ慣れたので、凹んだりはしません。もちろん演奏は全力を尽くします。お客さんが少なくてもお金を頂いて演奏したら、それは活動としてはプロですから。まあ、それは昔から同じ。

 

僕は、最近はなるべくライブの映像を撮ることにしています。1ライブにつき2曲くらいはあげようかな、みたいなことは考えています。お客さんが来なくなっても、ライブ映像あげればまあ数百人の人が1日くらいで映像を観てくれます。

 

そこで、僕はドネーションのページを作ることにしました。

布川俊樹JAZZ CHANNEL DONATIONサイト 

 

https://toshikinunokawa.com/jazzchannel/donation/

 

ミニマム300円から寄付をして頂くことができます。こういうことに反対意見のミュージシャンがいることも知っています。それもわかります。僕も以前だったら、自分のアーティストイメージとか考えて(イヤな言葉ですね)、かっこ悪いし、自分から言ったら物乞いじゃないか?とも感じます。そんなこと言うのはプロとして恥ずかしくないのか!ミュージシャンとしての気概はどこにあるんだ!とも思います。

 

ただ一方で、あまりに音楽全般が「タダ」になり、ミュージシャンは「無償奉仕」があたり前ということへの微々たる抵抗の思いもありました。

 

少なくとも、コメント見ると、演奏に相当好意的に思って頂いてるように思ったりするわけです。もちろん、イイネや好意的なコメントは嬉しいんですよ。ただその映像に残された演奏は、以前だったらその場所に行ってチャージを払うことによって見ることができたものです。

 

なぜこんな記事を書いたかにはきっかけがありました。そのドネーションのページに、昨日いまとなってはジャズのギャラとしては普通にいい感じのドネーションをある方にして頂きました。ただただありがたいです。3万回再生されてグーグル様から頂けるのは7,000円ですから。

 

いま僕も大変ですが、ライブ中心の若いミュージシャンの人たちも本当に大変だろうと想像します。僕はこの1年は100万単位の減収だし、今年度になってから本業の音楽で家計が黒字になった月は1回もありません。いわゆる貯金の切り崩しですね。大学の先生とかやってるにもかかわらずです。僕は微妙に基準に満たないのが続いているのでお上の支援金ももらっていません。ジャズライブ仕事だけだったら、って考えるとゾッとします。コロナ時代になってバイトを始めたミュージシャンもさぞ沢山いることでしょう。

 

皆さんに言いたいことは、僕にドネーションしてください、ってことではありません。それはさすがにミュージシャンとして恥ずかしい。ただ、いま音楽を聴く側、観る側はほぼタダですが、作る側は手間暇があるってことは知って頂きたくてこういう文章を書きました。

 

僕以外でも「投げ銭」や「ドネーション」を集っているミュージシャンはたくさん見ます。一方で「投げ銭」に抵抗あるミュージシャンもいる印象です。

でも、聴き手が、その映像や演奏を気に入った、楽しんだ、何か役に立ったのであれば、応援してあげれば、ミュージシャンのモチベーションは上がるし、この苦境を生き抜く力になり得るということです。またそれは金額の多寡ではありません。

 

かなり迷いましたが、こういうことを敢えて還暦を越えたベテランミュージシャンが率先して言うのもいいのではないか、と思ってこの記事を書きました。

 

いま大学の空き時間にこの文章を書いています。今夜も大塚ドンファンで若者とのNeutrioライブです。台風が近づいているときで、禁酒法最後の日というアンラッキーではありますが、もちろん全力でライブに臨みます。

 

明日からはライブでお酒を飲めるようになりました。お客さんがお店に戻って来てくれることを心から願っています。


 

 

P.S  コロナ時代(*)…実は、僕は、コロナ禍と言う言葉を使わないようにしていて「コロナ時代」と呼んでいます。何か好きじゃない言葉であることと、例えばこのコロナ時代は、自分のいる業界ばっかり見てると、本当に厳しく辛い時代ですが、そう思ってない人も相当数いると見ているからです。カブ栽培をやっていてもこれは実感すること。僕は昨年3月には大恐慌になると思いました。でもそれは、フリーランスのバイアスがかかった見方でした。この時代にすごく儲かっている企業は多い。以前と同額の給料もらって会社に通勤しないで済むようになって楽で良い、とかそういう人たちも少なからずいると思います。ちなみに、学生の授業出席率とか2年前とは比べものにならないほど良いわけです(苦笑。まあ学生はかわいそうだと思ってますが)。

 

 

 


 

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