盟友福田重男とのデュオコンビのこと [音楽雑感]
福田重男氏との17泊18日のジャズ渡世人タビが終わった。12日間連続ライブ、呉での2日間オフ、広島での3日間レコーディング、そして800kmの帰路。合わせて18日間。移動は僕のロートルプリメーラだから、ほぼ寝る時間以外は一緒に過ごしていることになる。なかなかこれだけ一緒にいて煮詰まったり飽きて来ない人も珍しい(笑)。
まあ、やはり相当合うコンビなのだろう。福田氏は僕より1歳上の1957年生まれ。音楽仕事始めた頃からだから、もう30年以上の付き合いだ。20代前半は、お互いに新宿ピットイン朝の部でガンバってた。僕は、彼のことを「福田さん」か「福田氏」と呼ぶ。「福田巨匠」ってのもあるな。僕は変に体育会系っていうか(あ、父親の海軍から来てるのかも…)、歳上の人を「福ちゃん」などと決して呼ばない(笑)。唯一例外は初っつぁん(古川初穂氏)だが、彼はそう呼んで欲しがるからな。飲み会とかですぐ女子とかに「初っつぁんと呼んで」とか言ってるおっさんだ(笑)。あ、福田氏は僕のことは「布ちゃん」と呼ぶ。
2人のタビの会話は、僕たちが大変お世話になってるCちゃん(フライヤー作って頂いた)言うところの「典型的なおっさん会話」だ(笑)。スポーツ、車、カブ、経済、ギャンブル、仕事、酒etc.の話とかをしてる。音楽の話はまわりの連中の噂話(たいていバカ話)以外はしない。とにかく色々なところで自然に合うわけですな。僕にとっては、「ジャズ界でカブ栽培をやってる数人の一人」っていうのも大きい(笑)。それからまあほぼ何があっても打上って酒を呑む。得難い相方、粋な遊び人ジャズマンだ。
高松では、ライブ3分前くらいに何か銘柄の話してて、僕が「七銀行」奨めたら(もちろんインチキアナリストぬのさんの解説つきです…笑)福田巨匠すかさず買い入れてたのには笑った。呉では彼の海軍繋がりで最高の体験をできた。ホントに感謝してますよ。
僕が見る福田氏は、べらんべえで歳上の人とも「オレはさー…」みたいにため口で喋ったりするけど(笑)、実に人付き合いには色々気配りがあって、人間との付き合いを非常に大切にしている人だ。これは僕には足りないところ、僕はどちらかというと理系ひきこもり系若干ア●ペなところもあるから、すぐ自分の世界に入りやすいんだよね(注意はしてるんだけど)。だから、全国津々浦々彼の人脈は強力で彼とツアーしてると必ず何か面白いことが起こる(笑)。一昨年はジャガー乗ったしね!エレガントを身上にしながら、いきなりかなり下品なことも言ったりする。まあ要は、とにかく人間力ある魅力溢れる人ってことだ。
さて、今回のツアーの映像がひとつだけ残っている。
2日めの神戸でのライブの模様が実験配信されたのだ。もうずいぶん昔のことに思えるけど(笑)。
いま、Rollcakeという会社が、ジャズライブ映像を配信するアプリを作るという試みに取り組んでいる。担当の永野さんが「熱いジャズライブへの想い」を持っていて、僕は話を聞いて賛同しているので、今後も色々協力してやって行くことと思う。
映像に興味ある方は、是非以下のサイトに行ってみてください。
https://hellofrom.pw/live_album/
FBジャズギター研究会と笹島明夫さんとの出会い [音楽雑感]
ってのはウソで、ヴォイスパーカッションの掛け合いでイパネマの娘でした。ちなみに笹島さんは函館出身。
こんな楽しい会だったわけです。
そして、その3日後がメグでのデュオライブ。
It Could Happen To Youに始まって10曲以上、楽しかったなあ。笹島さんがジャイアントステップスの進行をちょっとマイナーっぽくしたシシリアンステップスっていうのが難しいけど面白かった。マイナーなのはシシリーでゴッドファーザー的(笑)?
この日もジャズギター研究会の重鎮勢揃いとなりました。
左から松元さん、笹島さん、明くん、須山社長、
直人くん、ワタクシ、梅田くん、江尻会長、
僕の生徒の小此木くん。
超久々にウルトラマンジャズを聴いてみる [音楽雑感]
おはようございます。秋の3連休いかがお過ごしでしょうか。関東は天気イマイチですね。僕は休みなし。今月は月曜祝日2日とも大学授業があるんですよねえ(グスン)。
またまた軽い話題を。
高1の息子はいま高校の軽音楽部に入ってドラムをやっています。やたら体育会系の厳しいノリで土日もほとんど部活。最近の彼との会話はビートルズを始めとするOld Rockな話題。親子の会話が増えました。やっぱりポールのコンサートに連れて行ったのが大きかったな(笑)。
先日、彼が急に「ウルトラQ」のジャズヴァージョンを聞きたいとか言い出しました。息子は「ウルトラマンジャズ」が小さい頃から好きだったんだけど、ウチに1枚めだけないからそれは聴いてなかったんですね。自分のリーダーアルバムなんだから当然2枚くらいは持ってたはずなんだけど、何故かウチにありません。誰かに貸して帰ってないとしか思えない(苦笑)。YouTubeとか上がってるかな、と思って探してもない。中古品をググってみると……、
一時は5万とかで取引されていた商品も天井圏からかなり下落。一番安いのは650円でした(笑)。ヨッパラってたこともあってそれを即ポチリ!
一昨日到着。全然ジャケット綺麗じゃないか。ライナーも帯も付いてたし。持ってた自分のものよりいいぞ(笑)。
10年以上ぶりでちゃんと聴いてみました。
新鮮、かつ若い。1998年の録音ですからね。40歳のとき、ディパーチャーLAレコーディング直後です。
弾いてるフレーズとかはいまと大して変わらないんだけど、何か違うな。何なんだろう…。ギターはほとんどアーガスのセミアコで結構好きな音で録れています。
このレコーディングは完全な2ch一発録り。ミックスとかがないわけです。要は60年代前半くらいまで(なのかな?)のジャズと同じ録音方法です。面白いのは、演奏の終盤になるにしたがってそういう緊張感が高まっています。このテイクが採用されそうだ、ということは演奏しているメンバーはよく感じることがあります。そういうとき2ch一発だったら絶対に曲の最後の方で失敗はできませんからね。1曲め「ウルトラマンの歌」の最後の僕と小池修くんのトレードから一緒に絡んでソロをしているところからエンディングフレーズへは確か合図で行くことになっているんだけど、かなり皆迷いが見られます。「どこで行くんだ」みたいな(笑)。よく終われました。
速い4ビートなんかひょっとして途中ロストしてるのかな?とも思わせるところもあって相当な緊張感に溢れています。
ジャズ的によかったのは、息子が聴きたかった「ウルトラQ」ですね。オリジナルからしてジャズっぽくてかっこいい曲ですからね。1曲め「ウルトラマンの歌」はちょっとこっ恥ずかしいイージーリスニングジャズって感じ。これがよかったんでしょうね。僕、福田重男、小池修、香取良彦、納浩一、岩瀬立飛も皆アラウンド40。40代は福田氏と僕だけの若いサウンドです。
しかし、これが2万枚以上売れたっていうのもありがたい時代だったよなあ…。
以下に中古が出てます。もう安いです(笑)。
自分のアルバムを中古で買う日が来るとは思わなかった(超苦笑)。
ジャズギタリスト、ローリングストーンズを語る!の巻 [音楽雑感]
Get Yer Ya-Ya's Out! Rolling Stones in Concert
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ぬのさん、大学4年生の頃の演奏 [音楽雑感]
意志あるフレージング [音楽雑感]
皆さん、おはようございます。秋の連休、好天に恵まれまさに行楽日和です。僕は今日から沼津、水戸、新潟県三条3連チャンのFoundツアー、ガンバって行こう!昨日のヴォーカリストイベントライブの件と合わせてまた報告しますね。
さて、軽い気持ちで Facebookに投稿したら、やけに反響があったので、ブログに若干手直ししてまとめておきます。非常にジャズ練習者にとっては重要な内容だと思うので。題もつけてみました。
「意志あるフレージング」
大学で「ジャズフレージング入門」の授業をやってて感じたことを備忘録として書いておこう。
ジャズ初心者学生のプレイを聴いていると、自分のプレイしている音がアタマの中でイメージできているのか相当疑問に感じてしまう。イメージしている、というのは曖昧だな。ちゃんと歌えているかということだ。
以前、僕が持っていた英会話教材に、短いセンテンスからどんどん言葉を足して行って長い文章を一気に言えるようになる、みたいなやり方を取っている本があった。
言葉だったら、ジャズ初心者だって言えると思う。
1、僕はジャズフレージングを練習している。
2、僕はジャズフレージングを毎日練習している。
3、僕はジャズフレージングを毎日一所懸命練習している。
4、僕はジャズフレージングを毎日一所懸命練習しているがなかなかうまくならない。
5、僕はジャズフレージングを毎日一所懸命に練習しているがなかなかうまくならなくて少々凹んでいる。
6、僕はジャズフレージングを毎日一所懸命に練習しているがなかなかうまくならなくて少々凹んでいたら布川先生が優しく教えてくれた。
これ、どこまで覚えられるだろうか?日本語ネイティブなら4つめまではまず大丈夫だろうと予想する(だよね?…笑)。
最後の文章は長過ぎで酷く下手くそな文章だが、覚えられる人もいるだろう。
これとインプロヴィゼーションのフレージングも似たようなものなのだ。何か1小節のフレージングを歌う。同じものをもう1回歌う。それを弾く。これを繰り返せばいいのだ。僕は今日学生に「僕はたとえば4小節くらいのフレージングは丸々覚えられる」と言って、ためしにそれくらいの長さのフレージングをアドリブで歌った後に、同じフレージングを弾いてみせた。できるかわからなかったけど(笑)、やってみたらやっぱりできた。
歌うというのは正確な音程で歌う必要はない。何となくリズムだけでも高低感や跳躍をドゥダダー、とかタッタラーみたいに歌うのでもよい。
とにかく頭の中でフレージングの塊を感じること、これこそが、「フレージングを即興で思いつく」ということなのだと僕は考える。
では、何故僕は4小節くらいの(テンポ速かったらもっと覚えられると思う)自分の弾こうとするフレージングを覚えられるのか?
でもね、プロの人だったら1コーラスくらい覚えられる人もいるだろう。モーツアルトだったら…
ってのはおいといて…、
これはジャズ練習期にしたたくさんのコピーがあるからなのだ。それだけは間違いない!
ジャズのソロのコピーは高校2年生から始めた。ウェスモンゴメリーに始まり、ジムホール、香津美さん、ジョージベンソン、大学入ってからはフュージョンギタリスト色々、パットマルティーノ、秋山さん、笹路さんなどジャズ研諸先輩、ハンコック、ブレッカー、ショーター、コルトレーン、ウィントンケリー、貞夫さんとか他楽器も1曲くらいはやった。かっこいいフレーズをちょいコピーするんだったらもっと覚えてないくらいたくさんやってる。それで4年生の頃ジョンスコ大師匠に出会うことになる。
コピーっていうのは高校生の頃は全然できなかった。マイルスのバグスグルーヴのソロだってよくわかんないくらいだった。だからカセットを1音1音止めて音取ったりする。でも1年くらいガンバってやったら1小節くらいのフレーズとして捉えられるようになった。
要はコピーは、パッと1小節くらいのフレージングをハミングしたりしてそれを楽器で弾いて確認するって行為なんだな。
これ、科学的な根拠はないけど、言葉を覚える過程と似た様なものでは、と想像する。言葉を覚えるってのは、パパとかママとかうま!とかワンワンとかゴードンとかでんしゃとかぶーぶとかどきんちゃんとか聴いてそれを反復してるわけだよね。
それと同様に、コピーすることを多量にやることによってジャズ語をネイティブ化して行くのだ。
で、大学時代も上級生になる頃には、ジョンスコとかは無理だけど、ケニーバレルやグラントグリーンみたいなモダンジャズだったら楽器なしでもコピーできるようになって、練習のために楽器なしでコピーとかやってた。
何か、コピーとかあまりしていない人が学生とか見てると多い気がするんだな(もちろん例外はいるけどね)。
でもね、例えば、ミーレラファミレってメロディーを聴いてすぐ弾けないプロのジャズミュージシャンは僕のまわりにはまずいないと思うんだよね。これは「こんにちは」みたいな話なの。
今日、僕が誰かに学校で会って挨拶するとする。
「おはよー、コンディミの中のトライアドは4つだよ。昨日はカレー食べたしね。」みたいなプレイをしてたらイカンということなのだ。
ジャズのフレージングも言葉と同様、意味の流れがある、だから覚えられるわけです。
最後にジャズ練習者(僕もだが…)の皆さんに、もうひとつだけ付け加えよう。
何かパッと1、2小節のフレーズ(というかメロディーと考えてもよい)を弾いてみて欲しい。弾いたら、それをすぐもう1回繰り返して弾いてみよう。
それができなければ、「フレージングへの意志」のないプレイをしているということだと僕は思っている。
長文お読み頂きどうもありがとうございました。Q&Aブログ的な内容でしたが、ジャズを学ぶ皆さんの参考になれば嬉しいです。
ジャズの壁を超える100のアイディア (jazz guitar book Presents)
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芸術鑑賞会感想文の感想文 [音楽雑感]
ほとんどの生徒がとても楽しんでくれていたことがわかって嬉しかったな(ホントに90%くらいの生徒に大好評だった。これはお世辞ではないと思った)。
予想していたことがが、わかったことは…、
(1)ジャズを知っていた生徒はほとんどいない。ジャズは好きだったと書いた生徒は300人以上で5人くらい。アドリブ(即興演奏)があることに驚いている生徒も多かった。
(2)ジャズは焼き肉屋でしか聴いたことがなかったですが…、って人がいた。それに類する文章多数。
(3)その鑑賞会では、演奏の合間にジャズの歴史、演奏方法などを相当わかりやすく説明したのだが、それをすることによって馴染みやすくなったという生徒が多かった。
(4)「ウルトラマンの歌」、「上を向いて歩こう」などの曲をアレンジして演奏したのだが、それに対して「新しい曲でもジャズになるんですね」という感想がいくつかあった。全然新しくないのに(笑)。つまり、焼き肉屋や喫茶店でかかってるジャズは完全にクラシックと思われているということ。ちなみに、「ウルトラマンの歌」はバカ受け。いまの中学生に対しても力あるんだな。
(5)ヴォーカル吉田沙良ちゃん大人気。やっぱり歌が入るととっつきやすいみたい。「ウルトラマンの歌」も歌ったしね。「ウルトラマンジャズヴォーカル」やるか(笑)。
(6)ドラムの伊吹文裕くんがバカリズムの人に似ているらしい(笑)。彼も大人気だった。やっぱりスター楽器だよな。
(7)ギターの人が口をパクパクさせて弾いているようだ。金魚か(笑)!ちなみに、ジャズでギターって使うんですか?っていうのもいくつかあった。マイナーな楽器なんだな(グスン)。
とにかく言えることはですね、我々ジャズミュージシャンはこういう活動を積極的にして行けば、若者がジャズに対して興味を持つ可能性はまだまだあるということだ。
ジャズ布教をやって行かねば!
という思いを新たにしました。
てーした結論ではありませんが、感想文の感想文でした。
ジョン.スコフィールド.トリオ! [音楽雑感]
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しおさい石原社長と作戦会議 [音楽雑感]
廣瀬真理子という稀有な弟子 [音楽雑感]
皆さん、こんにちは。真夏モードになって来ましたね。
今回は、細胞分裂を繰り返し、ついに羽化して飛び立った弟子の成長物語(幼虫→さなぎ→成虫)を書いてみます。
7/8(日)廣瀬真理子とPurple Haze
廣瀬真理子(cond,arr)、大塚 望(vo)、谷高 美紀(ss,as,fl)、沼尾 木綿香(as,fl)、寺井 雄一(ts,cl,fl)、廣海 大地(ts,fl)、 宮木 謙介(bs,b-cl)、河原 真彩(tp,flu)、石川 広行(tp)、栗山 雄暉(tp)、佐瀬 悠輔(tp,flu)、 張替 啓太(tb)、江藤 弘憲(tb)、早坂 勇真(tb)、前田 真梨子(btb)、匹田 重幸(gt)、 永吉 俊雄(p)、加藤 久志(wb,eb)、伊吹 文裕(ds)、guest : 香取 良彦(vib)、布川 俊樹(gt)
の東京TUCでのライブに香取良彦氏とともにゲスト参加した。
ツイッターやFBをチェックしてる方はご存知だろうが、廣瀬は洗足学園音楽大学ジャズコース今年の卒業生。僕が大学で教えた唯一の女子ギタリストで、彼女が高校生の頃から足掛け5年間教えている。また、大学ではアレンジをカトリアン教授こと香取良彦氏に師事した。
その彼女が率いるビッグバンドが廣瀬真理子とPurple Hazeだ。メンバーは洗足のOBと現役学生によって構成されている。これが実に素晴らしいサウンドなのだ。サウンドはまさに香取オーケストラのDNAを受け継いだもので、細部まで強力に変なこだわり(褒め言葉!)、廣瀬節が溢れている。ライブは全6曲。僕は2曲に参加した。1曲はジミ.ヘンドリクス「Crosstown Traffic~Foxy Lady」、もう1曲はチャールズ.ミンガス「フォーバス知事の寓話」。ミンガスは大好きだそうでもう1曲あった。一番印象に残ったのは、彼女のオリジナル「Zintaii」。あまりビッグバンドに詳しくないからよくわからないけど、香取オケとザッパとザ.バンドのアメリカ的な雰囲気がほどよく混ざった感じというか、ということはカーラ.ブレイ的な感じもちょっと?みたいな。卒業制作で録音した謎の歌もの「Differentiation(分化…生物などの)」も面白い。こんな強力なメロディー大塚望よく歌えたな(笑)。全体のサウンドとしては執拗なマイナーメジャー7th攻撃が彼女のこだわりかも?とにかく不気味で美しく危うく面白い世界を構築する。
そんな彼女、どんな生徒だったのだろうか?上の文章を読むと、何かぶっ飛んだ素行で才気溢れる面白い変わった生徒を想像するんじゃないかな。ところがどっこい、授業はほとんど出席するいたって真面目な学生だった。それでいつも弱気で自信なさげ。おまけに胃腸虚弱。今回のライブもプレッシャーでかなり苦しい思いをしたらしい(苦笑)。
ギターは僕が教え始めた高校3年の頃はまだ初心者の域を出ていなかった。それを要点だけ教え込んで、無理矢理洗足音大に入学させちゃった(笑)。彼女の代はギタリストが非常に多く、数人メチャテクニカルな学生もいた。彼女はいつもコンプレックスの塊だった。レッスン開始のときは「最近どう?」「全然ダメ。弾けません」いつもこんな感じ(苦笑)。それを僕が何度も説得したりなだめたり。彼女は不器用だったし、色々なジャンルのギターをパッと弾けるとかそういうこともないし、常に自分のテクニックのなさに悩んでいた。
あるとき、「カート.ローゼンウィンケルみたいな感じとか全然できないんですけど…」と相談された。「コンディミのフレーズが使えないんですけど」みたいなのもあった。音楽大学みたいな狭い社会だと、やはり巧い生徒の影響力は絶大である。そういう人たちが「今はこれがトレンド…」みたいな感じになると、やらなきゃいけないような気になっちゃう。僕は「君はそういうことをやりたいとホントに思ってるの?好きなの?」と聞いた。「そうでもないんですけど…。」「いいかい?こういう音楽はね、クラシックじゃないんだからね、自分のよいと思ってるサウンドを出せればいいの!よいメロディーをいい感じ(アーティキュレーション)でいいリズムで弾けりゃー別に1音で弾いてたっていいのんだよ!例えばケニー.バレルみたいのどう?」「それもあんまり好きじゃないです」。「そうか(まさに苦笑)」。ちなみに、その頃の彼女はメロディーはまったくの棒弾きだった。
「私よりヘタな学生はいない。皆にバカにされる」とかもよく言っていた。どう答えたっけな(笑)。「いいかい。学生でほんの一握りだけちょっと巧いやつはいるけどね、あとは皆ドングリ。ここがよきゃーここがダメみたいのばっかりなんだよ。僕に言わせればどれも大同小異で大して変わらない。この中でちょっと巧いだのヘタだの言ってたってしょーがないんだよ。それに別に全員がバシバシ速く弾ける必要もないよ。自分のやりたいこととスタイルを見つければいいんだよ!」みたいなことを言ったかな。
そんな彼女が3年くらいの頃だったか…。いつも僕がお世話になってる小岩BITで僕の洗足レッスン生徒のライブをやった。このとき彼女と僕の2ギターでミンガスの曲をやった。彼女のプレイは何かパッションがあって、他の巧い学生よりも印象的だった。「いいかい、今日の君のプレイは巧くはないかもしれないけどとてもよかった。一番存在感があったよ」。そんなことを言った。
そして4年になって、彼女は僕のレコーディングアンサンブルクラスに参加して、アレンジ曲を持って来たりするようになった。「The Peacocks」(8日のライブではビッグバンドヴァージョンとなった)、参加メンバー皆でびっくりしたアレンジだった。4年後期になってからは「私はギターはダメだから弾かない。でもアレンジとかしたい」とか言うようになった。
それで、心底ぶったまげたのが卒業制作のレコーディング作品2曲(ツイートしたと記憶している)。こんなことができるようになったのか…!まさにそのサウンドは、カトリアンDNAが刻まれたものだった。ちなみに、そのレコーディングでは彼女はギターは弾いていない。今回のビッグバンドメンバーのスーパーテクニシャン同級生匹田重幸がギタリストだった。
廣瀬真理子とPurple Hazeは、その卒業制作ビッグバンドがきっかけで生まれたビッグバンドだ。今回が初のお披露目ライブ!同級生やOB達は、さぞ彼女の成長、そのサウンドの独自性と素晴らしさに驚き尊敬したことだろう。僕も「私は全然ダメです…」と弱々しい口調で言い続けた彼女がここまでのサウンドを出したことにいたく感……、
まあ自分の弟子だしこれくらいにしておきますか(笑)。
とにかく「もうこれで心置きなく…」とか言わないで(笑)、是非またやって欲しい渾身のビッグバンドだ。僕も昆虫カトリアン(なぜ昆虫かは彼女か教授に直接聞いてください。やけにこの日のライブMCで盛り上がった昆虫話…笑)もいつでも協力しますよ。ただ6曲は少ない。次やるときはあと4曲は増やそうね!
日曜夜のオフィス街でこれだけの人数を収容する飲み屋発見!
ラッキー!
P.S1…「ギターは弾きません」と言っていた彼女は、島村楽器初の女性エレキギター講師となったばかり。何と約20人もの生徒を既に担当し、3つの教室で教えている。「ギターがヘタ」と言い続けた彼女ならではのわかることもたくさんあると思う。でもギターもガンバって(笑)!
P.S2…メンバーもガンバった!やっぱり先輩は流石に経験を積んだ貫禄あるプレイをしていた。トランペットの石川くんとか立派になってたな。
P.S3…ちなみに彼女は「蛾」マニアです(笑)。ジャズ界のモスラ目指せ!