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廣瀬真理子という稀有な弟子 [音楽雑感]


皆さん、こんにちは。真夏モードになって来ましたね。


今回は、細胞分裂を繰り返し、ついに羽化して飛び立った弟子の成長物語(幼虫→さなぎ→成虫)を書いてみます。

 


7/8(日)廣瀬真理子とPurple Haze

廣瀬真理子(cond,arr)、大塚 望(vo)、谷高 美紀(ss,as,fl)、沼尾 木綿香(as,fl)、寺井 雄一(ts,cl,fl)、廣海 大地(ts,fl)、 宮木 謙介(bs,b-cl)、河原 真彩(tp,flu)、石川 広行(tp)、栗山 雄暉(tp)、佐瀬 悠輔(tp,flu)、 張替 啓太(tb)、江藤 弘憲(tb)、早坂 勇真(tb)、前田 真梨子(btb)、匹田 重幸(gt)、 永吉 俊雄(p)、加藤 久志(wb,eb)、伊吹 文裕(ds)、guest : 香取 良彦(vib)、布川 俊樹(gt)

 

hirose.jpeg

 

の東京TUCでのライブに香取良彦氏とともにゲスト参加した。

 

ツイッターやFBをチェックしてる方はご存知だろうが、廣瀬は洗足学園音楽大学ジャズコース今年の卒業生。僕が大学で教えた唯一の女子ギタリストで、彼女が高校生の頃から足掛け5年間教えている。また、大学ではアレンジをカトリアン教授こと香取良彦氏に師事した。

 

その彼女が率いるビッグバンドが廣瀬真理子とPurple Hazeだ。メンバーは洗足のOBと現役学生によって構成されている。これが実に素晴らしいサウンドなのだ。サウンドはまさに香取オーケストラのDNAを受け継いだもので、細部まで強力に変なこだわり(褒め言葉!)、廣瀬節が溢れている。ライブは全6曲。僕は2曲に参加した。1曲はジミ.ヘンドリクス「Crosstown Traffic~Foxy Lady」、もう1曲はチャールズ.ミンガス「フォーバス知事の寓話」。ミンガスは大好きだそうでもう1曲あった。一番印象に残ったのは、彼女のオリジナル「Zintaii」。あまりビッグバンドに詳しくないからよくわからないけど、香取オケとザッパとザ.バンドのアメリカ的な雰囲気がほどよく混ざった感じというか、ということはカーラ.ブレイ的な感じもちょっと?みたいな。卒業制作で録音した謎の歌もの「Differentiation(分化…生物などの)」も面白い。こんな強力なメロディー大塚望よく歌えたな(笑)。全体のサウンドとしては執拗なマイナーメジャー7th攻撃が彼女のこだわりかも?とにかく不気味で美しく危うく面白い世界を構築する。

 

そんな彼女、どんな生徒だったのだろうか?上の文章を読むと、何かぶっ飛んだ素行で才気溢れる面白い変わった生徒を想像するんじゃないかな。ところがどっこい、授業はほとんど出席するいたって真面目な学生だった。それでいつも弱気で自信なさげ。おまけに胃腸虚弱。今回のライブもプレッシャーでかなり苦しい思いをしたらしい(苦笑)。

 

ギターは僕が教え始めた高校3年の頃はまだ初心者の域を出ていなかった。それを要点だけ教え込んで、無理矢理洗足音大に入学させちゃった(笑)。彼女の代はギタリストが非常に多く、数人メチャテクニカルな学生もいた。彼女はいつもコンプレックスの塊だった。レッスン開始のときは「最近どう?」「全然ダメ。弾けません」いつもこんな感じ(苦笑)。それを僕が何度も説得したりなだめたり。彼女は不器用だったし、色々なジャンルのギターをパッと弾けるとかそういうこともないし、常に自分のテクニックのなさに悩んでいた。

 

あるとき、「カート.ローゼンウィンケルみたいな感じとか全然できないんですけど…」と相談された。「コンディミのフレーズが使えないんですけど」みたいなのもあった。音楽大学みたいな狭い社会だと、やはり巧い生徒の影響力は絶大である。そういう人たちが「今はこれがトレンド…」みたいな感じになると、やらなきゃいけないような気になっちゃう。僕は「君はそういうことをやりたいとホントに思ってるの?好きなの?」と聞いた。「そうでもないんですけど…。」「いいかい?こういう音楽はね、クラシックじゃないんだからね、自分のよいと思ってるサウンドを出せればいいの!よいメロディーをいい感じ(アーティキュレーション)でいいリズムで弾けりゃー別に1音で弾いてたっていいのんだよ!例えばケニー.バレルみたいのどう?」「それもあんまり好きじゃないです」。「そうか(まさに苦笑)」。ちなみに、その頃の彼女はメロディーはまったくの棒弾きだった。

 

「私よりヘタな学生はいない。皆にバカにされる」とかもよく言っていた。どう答えたっけな(笑)。「いいかい。学生でほんの一握りだけちょっと巧いやつはいるけどね、あとは皆ドングリ。ここがよきゃーここがダメみたいのばっかりなんだよ。僕に言わせればどれも大同小異で大して変わらない。この中でちょっと巧いだのヘタだの言ってたってしょーがないんだよ。それに別に全員がバシバシ速く弾ける必要もないよ。自分のやりたいこととスタイルを見つければいいんだよ!」みたいなことを言ったかな。

 

そんな彼女が3年くらいの頃だったか…。いつも僕がお世話になってる小岩BITで僕の洗足レッスン生徒のライブをやった。このとき彼女と僕の2ギターでミンガスの曲をやった。彼女のプレイは何かパッションがあって、他の巧い学生よりも印象的だった。「いいかい、今日の君のプレイは巧くはないかもしれないけどとてもよかった。一番存在感があったよ」。そんなことを言った。

 

そして4年になって、彼女は僕のレコーディングアンサンブルクラスに参加して、アレンジ曲を持って来たりするようになった。「The Peacocks」(8日のライブではビッグバンドヴァージョンとなった)、参加メンバー皆でびっくりしたアレンジだった。4年後期になってからは「私はギターはダメだから弾かない。でもアレンジとかしたい」とか言うようになった。

 

それで、心底ぶったまげたのが卒業制作のレコーディング作品2曲(ツイートしたと記憶している)。こんなことができるようになったのか…!まさにそのサウンドは、カトリアンDNAが刻まれたものだった。ちなみに、そのレコーディングでは彼女はギターは弾いていない。今回のビッグバンドメンバーのスーパーテクニシャン同級生匹田重幸がギタリストだった。

 

廣瀬真理子とPurple Hazeは、その卒業制作ビッグバンドがきっかけで生まれたビッグバンドだ。今回が初のお披露目ライブ!同級生やOB達は、さぞ彼女の成長、そのサウンドの独自性と素晴らしさに驚き尊敬したことだろう。僕も「私は全然ダメです…」と弱々しい口調で言い続けた彼女がここまでのサウンドを出したことにいたく感……、

 

まあ自分の弟子だしこれくらいにしておきますか(笑)。

 

とにかく「もうこれで心置きなく…」とか言わないで(笑)、是非またやって欲しい渾身のビッグバンドだ。僕も昆虫カトリアン(なぜ昆虫かは彼女か教授に直接聞いてください。やけにこの日のライブMCで盛り上がった昆虫話…笑)もいつでも協力しますよ。ただ6曲は少ない。次やるときはあと4曲は増やそうね!

 

日曜夜のオフィス街でこれだけの人数を収容する飲み屋発見!

ラッキー!

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P.S1…「ギターは弾きません」と言っていた彼女は、島村楽器初の女性エレキギター講師となったばかり。何と約20人もの生徒を既に担当し、3つの教室で教えている。「ギターがヘタ」と言い続けた彼女ならではのわかることもたくさんあると思う。でもギターもガンバって(笑)!

 

P.S2…メンバーもガンバった!やっぱり先輩は流石に経験を積んだ貫禄あるプレイをしていた。トランペットの石川くんとか立派になってたな。

 

P.S3…ちなみに彼女は「蛾」マニアです(笑)。ジャズ界のモスラ目指せ!

 

 


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コメント 1

妹子

すてきなお話ですね♪
何か得たような、あったかい気分になりました。
by 妹子 (2012-07-13 16:50) 

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